2020年6月2日火曜日

「福祉型大学」

2014年1月20日に我が国は障害者権利条約に批准し、障害のある人にない人と同じ権利を保障する義務を負うこととなった。
条約第24条「教育」第5項には、「提携国は、障害者が差別なしに、かつ、他の者との平等を基礎として、一般的な高等教育及び生涯学習を享受することが出来ることを確保する。このため、契約国は、合理的配慮が障害者に提供されれることを確保する」とあります。
2016年4月1日には障害を理由とした差別の解消を目的に、障害者差別解消法が施行されました。
けれども、現実的には、一般の高校卒業生は約7割が大学や短大、専門学校などに進学している一方で、知的障害特別支援学校高等部卒業生の進学率は1パーセントにも満たないという大きな格差が生じています。
 ほとんどの知的障害者は、高等部卒業後、一般就労か福祉サービス利用かという二者択一の道しかなく、進学という選択肢やモラトリアム(自分探しの時間)は準備されていません。
また、統計調査によりますと、知的障害者の職場定着率(一年間に渡って勤め続けることが出来た人の割合)は、68%となっており、新しい環境の変化、人間関係、コミュニケーション不足など様々な原因で躓きやすく、離職に追い込まれるケースも少なくありません。
 障害のある人たちの発達は緩やかだからこそ、卒業後ゆっくりと時間をかけて、生きるために必要な力や人生を楽しむ力、忍耐、努力の育成、相互承認の関係の確立、自尊感情、自己効力感、感情のコントロールを土台に社会のどんなアラナミニモ耐えうる力「レジリエンス」(逆境力・折れない心)を獲得させる必要があり、昨今、学校教育に限らず福祉的支援においても、人としての成長と自立の土台を育むためには「学び」を取り入れることが不可欠である
ことがより一層認識されています。
この先駆的な取り組みには、よりスムーズに社会に入って行く為の助走期間として注目されている障害者総合支援法に基づく、障害福祉サービスの自立訓練(生活訓練)事業と就労移行支援事業(各2年間)を組み合わせた多機能型事業所
を大学に見立てた「福祉型大学」があります。
1・2年次の教育課程では、普通科と生活技能科の2つのコースを設け、普通科の授業は、生活・教養、経済、労働、ヘルスケア、文化・芸術、スポーツ、基礎学力、自主ゼミ(論文)、資格・検定など10教科あり、社会生活上、必要とされる知識・技術を身に付け、社会活動を体験します。一方、生活技能科は、障害の重い人を対象としており、身の回りにある身近な材料を使ってワクワクドキドキするような楽しい授業で、生活に関連することを実体験や視覚優位の教授方法を多く取り入れて学びます。
3・4年次の専門課程では、店舗実務、介護実務、厨房実務、物流実務など就労実務の教科が6割を占めるようになり、自分の興味や適性、能力にマッチした仕事を選択するとともに、特に4年次はインターシップを行い、徐々に仕事に対する自信と意欲を培います。
かつて、元福島養護学校校長 第7代福島市手をつなぐ親の会会長 故 中丸良彦先生が遺された執筆に知的障害のある人の生涯学習がありました。

自分が現職のころ福養高等部開設準備中、私たちの研修に度々参加して頂いた、当時、医大病院小児科特殊外来を担当しておられた亡きM先生から「次はこの子の大学ですね」というコトバがあった。あのコトバは、成長の歩みの遅い人たちの学びの場、社交の場が、今後、ますます必要となるだろうというサゼスチョンだっあと思う。
今、学卒後の若者に接していると誰でも「学びは一生」であり、全ての人に生涯を通じて学びの場が必要であることを痛切に感じているところである。この人たちは自学のすべを身につけがたい人々である。

ほんの一文ではありますが、先人からも言われていた、福祉と教育の連携による青年期知的障害の権利保障の推進を願ってやみません。

参考資料 ゆたかカレッジ掲載記事 第2版
                 福島市手をつなぐ親の会 ふきのとう

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